2016.07.02 sat 〜 14 thu

武田鉄平「絵画と絵画、その絵画とその絵画」

“「顔」は、もはや「俺」でも「おまえ」でも「誰か」でもなく、「絵画」になりたがっている。なろうとしているけれど、はたして俺は「絵画」なのか? これが「絵を描く」ということなのか? という問いを、のっぺらぼうたちは発している。なぜ描くのか。何を描きたいのか。僕は尋ねなかったし、彼も多くを語らなかったが、2年以上を費やしている「顔」の連作が、まもなく完成するという”(企画:宮本武典)

開廊時間:11:00〜20:00
休廊日:月曜日

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武田鉄平(たけだ・てっぺい)。画家。1978年山形県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業後、サイトウマコトデザイン室入社。2007年、山形へ帰郷。2013年、現在のコンセプトでの絵画制作を開始。

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何をつくればいいのか、ずっと迷いながらやってきた。
母親が死んだ時、作るのをやめようと思った。
けれど、気が付けば筆を手にしている自分がいる。
とはいえ、相変わらず何を描けばいいのかはわからなかった。
どんなモチーフも、どんな技法も、しっくりこない、納得できない。
ある日、ふっと思いつく。
絵そのものを描いたらどうだろう?
描かれた絵画を、再度、絵にすることで、絵画とは何か、見るとは何か、を明示することができるのではないだろうか。
その考えを出発点に、絵を描き始めた。

毎晩、寝る間際、明日はどう描こうか、を考えて眠りについている。
そんな夜が続くのだろう。
その先には、言葉にできない、絵画にしかなしえない真実があると、信じている。

武田鉄平

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アトリエには、紙の束や分厚い画集やレコードの類が、床からうず高く積みあがっていた。大きなスピーカーに載せた作業版に、几帳面に並んだたくさんのチューブ。駅前の通りに面した大きな窓には、ブラインドがびたりと降ろされていた。足を踏み入れた途端、このアトリエがどれほど切実に、安っぽい駅前の風景と隔絶して存在してきたか、僕は一瞬で、理解できた。
イーゼルに描きかけの絵画があった。のっぺらぼうの顔。フィルムを逆回しにするように、この絵の成り立ちを、アトリエのなかのいくつかの手がかりから辿ってみる。雑誌のグラビアなどから抽出した顔を、コピー紙に無造作に描き殴る。ほんの数分のストロークが生みだした色の混濁を、今度は数ヶ月を費やして、キャンバスに克明に描き写していく。集中力と描写力を要する仕事だ。
「顔」は、もはや「俺」でも「おまえ」でも「誰か」でもなく、「絵画」になりたがっている。なろうとしているけれど、はたして俺は「絵画」なのか? これが「絵を描く」ということなのか? という問いを、のっぺらぼうたちは発している。なぜ描くのか。何を描きたいのか。僕は尋ねなかったし、彼も多くを語らなかったが、2年以上を費やしている「顔」の連作が、まもなく完成するという。この夏、武田鉄平のアトリエから、彼が外に出すことを許した数枚の絵画を、KUGURUに展示する。彼の初個展だ。おそらくひどくガランとして、それでいてひどく演劇的な、忘れ難い展覧会になるだろう。

宮本武典

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会場:KUGURU
〒990-0042 山形県山形市七日町2丁目7-23 とんがりビル1階
企画協力:宮本武典、akaoni
問合せ:023-679-5433、info@maru-r.co.jp(株式会社マルアール)